光学のトラス メールを出す
楕円面鏡を用いた散乱光測定装置の開発・製造・販売と、
散乱光の空間分布測定と、反射、透過、散乱と吸収等の
委託測定も承っています。お気軽にお問い合わせください。
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STAR GEM 光学系の技術情報
反射光分布測定の問題点
社会のニーズ
  物体からの反射光分布は、モノの見え方に関係しています。そのために、平面描画に陰影付けで立体感を持たせるコンピューター グラフィックス(CG)分野の基礎になっています。また、棚に同じ商品が並んでいる時、消費者がどちらを選ぶかは、その価格も重要ですが、その商品に対する 今までの経験と知識から得られた見え方(反射光分布)で判断しています。例えば、リンゴのフジのように赤く着色するリンゴなら、より赤くて艶のあるほうが 美味しいと思っています。
  さらに、真上から物体に入射する光(垂直入射光)の反射率に比べて、斜めに物体に入射する光(斜入射光)の反射率は、一般に高 くなります。身近な例では、初夏から真夏の道路に現れる『逃げ水』です。遠くの路面が『テカって』見えます。人の場合『斜入射光によって顔がテカると、顔つ きがキツく見える』ようになります。お化粧は、化粧品の成分を工夫することで、この本来の物理現象を緩和するためだと聞いたことがあります。さらに進んで、 物体からの反射光分布を制御することで、道路標識や反射板はより認識しやすくなります。このために、実際に反射板に小さなビーズやプリズムを埋め込んで 再帰反射光成分を増やす構造を作り込んでいます。
  この延長線に、ヒートアイランド現象の解決策があります。建物の外壁や道路の舗装面からの乱反射光が、周りの空気の温度上昇を 引き起こすことがヒートアイランド現象の一因でした。この外壁や舗装面の構造や塗料を工夫することで、真夏の太陽からの直射日光の反射光を、直接太陽の方向 に返すこと(再帰反射させること)ができれば、周りの空気の温度は上昇しません。この結果、ヒートアイランド現象を緩和できます。一気にここまで進まなくても、 もし、室内のカーテン等で再帰反射を実現できれば、真夏の午後の西日が差し込む室内の温度上昇を抑制し、省エネで快適な生活を実現できます。
測定法の現状
  人の目は、物体からの反射光分布を感覚的に処理しています。反射光分布を定量的に測定するためには、入射光の天頂角度(θin) と方位角度(φin)の関数として、試料上の半空間中のすべての点(天頂角度θdと方位角度φd特定できる)で、その反射光強度を測定する必要があります。この ようにして測定された物理量は、双方向反射分布関数(BRDF)と呼ばれ、(θin,φin,θd,φd)の4変数の関数です。
  実際にこの双方向分布関数を定量的に測定できる方法は、『ゴニ オ反射率計』だけでした。しかし、この方法は、図からも明らかなように、試料上の半空間内で一点づつ検出器を動かして測定しているために、長い時間がか かります。(製品情報中の(注5)で、測定時間を見積もっています。)さらなる問題は、ゴニオ反射率計では、再帰反射を測定する角度では、検出器と光源が互いに接 近して衝突してしまい、正確な再帰反射率の測定ができないことです。また、よく知られている 『積分球』は、測定時間は10秒ほどですが、測定できるのは、反射率だけで、反射光分布を全く測定できません。
楕円面鏡の未解決問題
  欧米の研究機関で戦後から1980年代まで、楕円面鏡を使った反射光分布測定装置の開発が精力的に行われました。その理由は、 楕円面鏡には焦点が2つ (F1とF2)有り、一方の焦点を出た光は、必ず他方の焦点に到達します。この性 質を使えば、一方の焦点に試料を置き、他方の焦点に検出器を置いて、外部から試料を照射することで、試料上の半空間を一気に測定できるのではないかと考えたか らです。しかし、この目論見は全て失敗して、楕円面鏡を使った反射光分布測定装置はありません。
  この時得られた失敗の原因は、K.S.SnailとL.M.Hanssenによって、8件の問題 にまとめられています。この中の『多重反射問題』『拡大率問題』が、楕円面鏡固有の問題です。
多重反射問題
  検出器は、入射光を100%吸収できません。検出器に入射した光の一部は、検出器で反射して(図中の黄色の点線)、楕円面鏡を介して、 試料に戻ります。試料の反射率が高いときは、この戻り光の一部は試料で再度反射して、楕円面鏡を介して検出器に達します。この結果、試料の反射率が見かけ上大き くなります。
拡大率問題
  焦点F1近傍の点Pを出た光は、自分に近い楕円面鏡上の点J1(拡大領域)で正反射すると、焦点F2から離れた点Q1に到達します。 一方、遠い点J2(縮小領域)で正反射すると、焦点F2に近い点Q2に到達します。これは、紙面上に楕円を描き、点J1と点J2で分度器で正反射する光線を描くことで 確かめられます。このように、1点から出た光が、1点に集光できないので、大きな楕円面鏡では結像しません。
  実際、焦点F1に米$10紙幣のハミルトンの左目の瞳を一致させて、その場で撮影した写真 を示します。3枚の写真の左側です。次に、被写体はそのままで、カメラだけ焦点F2に移動させて撮影した写真を示します。真ん中の写真ですが、全く像になってい ません。
  この楕円面鏡の結像問題を解決するために、昔から採用されている方法は、狭い楕円面鏡を使うことでした。つまり、点J1と点J2が近 くにあれば、そこそこ結像します。しかし、楕円面鏡を狭くしてしまうので、広い領域に広がった反射光を集光することはできませんでした。結果として、楕円面鏡を 使った反射光分布測定装置の研究開発は、全て失敗しました。
トラスの目標
  我々は、物体により光が反射されることで、物体の存在を認識しています。その反射光分布の仕方から、物体の形状を識別し、反射 光分布の強弱(影)により、物体の立体感を獲得しています。トラスは、反射光分布の定量的な測定法を研究開発しています。

解決策
楕円面鏡の問題の解決策
  2台の同等の楕円面鏡を用意して、互の1つの焦点を共通焦点(F2)にして、残りの2つの焦点(F1、F3)を、共通焦点を挟んで互いに 反対側で一直線上に並ぶように設置します。これを HASHELL mirror (ハーシェル ミラー: HAndSHaked ELLipsoid mirrorからの造語です)と呼ぶことにします。この図から明らかなように、焦点近傍の点Pを出た光が、最初に縮小領域の点J2で反射すると、 次は拡大領域の点K1で反射します。最初が拡大領域なら、次が縮小領域になります。このように、この構造は、楕円面鏡で2回反射(図中の点J2と点K1))するとき に、拡大率問題をキャンセルできる構造になっています。
  実際に先程の例の焦点F1に米$10紙幣のハミルトンの左目を一致させて、この三番目の焦点で撮影した 写真を、3枚並んだ写真の右側に示します。左端の写真と全く同じ写真になっています。しかも、等倍率 正立像になっています。ちなみに、真ん中の写真は、2台の楕円面鏡を並べたときの共通焦点(F2)での写真です。全く像になっていません。
  また、使用している楕円面鏡は、半楕円型ではなくて、単独焦点を 通る面で切断(四分の一楕円面鏡)してあります。このために、多重反射問題(主な正反射光を点線で表示) もかなり解決しています。四分の一楕円面鏡を使うことのデメリットは、一度にCCDカメラで撮影できる空間を、四分の一空間(π str)にしてしまうことです。 そのために、反射光分布が存在する半空間を測定するためには、途中で試料を180度回転させたもう一枚の空間分布画像を撮影して、これら2枚の画像を合成する必要 があります。その測定の一例が、ブリリアント・カットのダイヤモンドからの反射光分布の測定 結果です。従来のゴニオ反射率計では、約4日間かかる測定をわずか10秒で行えれるようになりました。
検出系の広角化
  STAR GEM散乱計の検出部に半球レンズを用いています。これはCCDカメラの視野を広げるためでした。この検出系を光線追跡ソフトを 使って解析すると、半球レンズの中心からほぼ直径の長さに相当する位置に結像面があることがわか りました。この面を利用することにより、試料からの反射光分布を鮮明に撮影できるようになりました。実際のSTAR GEMでは、この結像面にテーパード光ファイバー の大口径面を一致させ、他方の小口径面をCCDカメラのセンサー面と一致させて使っています。

測定 及び 測定例
反射光分布及び透過光分布の測定法
  試料を焦点F1に設置すると、HASHELL mirror は等倍率正立像を焦点F3上に結像します。これにより、外部から照射された試料からの 反射光分布は、焦点F3から発生する分布と同等になります。焦点F3に検出系を設置することで、試料からの反射光分布を測定できます。透過光分布測定に関しても、 試料への入射光の向きを変えるだけで同様に測定できます。
全半球反射率の測定法
  試料からの反射光分布を撮影した合成画像の各画素の電荷数の総和と、試料無しでのバックグラウンドの入射光分布を撮影した画像の 各画素の電荷数の総和の比から、全半球反射率を求めます。全半球透過率も同様にして求めることができます。反射光分布が測定できていますので、この画像を解析 することで、正反射率、拡散反射率、再帰反射率も求めることができています。
ブリリアント・カットのダイヤモンドからの反射光分布
  ブリリアント・カットのダイヤモンドからの反射光分布を、 10秒で測定できるようになりましたので、測定条件をいろいろ変えて撮影することができます。半導体レーザ光の照射ビームを細くして、このダイヤモンドに照射し たとき、8回対称の『ラウエ斑点』に似た画像が得られました。図に示されているように、 ブリリアントカットは58面で構成されていますが、テーブル面とキューレット面を除くと、56面で 8の倍数です。確かに、8回対称になっています。
その他の測定例と計算例
  ブレーズ波長10.6μmの回折格子に、可視のレーザ光を入射させた時の 回折光の空間分布を測定した画像を示します。計算から期待されるように、全部で25スポットが観測できています。 スペクトラロン標準反射板からの散乱光の空間分布の画像と、これから求めた動径方向のBRDF(双方向反射分布関数)を示します。 再帰反射性試料に、入射角度30度で入射させた時の、再帰反射光スポット、正反射光スポットと 拡散反射光分布の画像を示します。HASHELL mirrorのシュミレーション結果を示します。上段のF文字 は大きさ1mmで、下段のF文字は大きさ4mmの時です。左の列は焦点F1の被写体の画像です。第2列と第3列は、焦点F2とF3の画像です。最右列は四分の一楕円面鏡ではなくて、 2台の半楕円面鏡のHASHELL mirrorの焦点F3の像です。

楕円面鏡を用いた散乱計の用途
用途
   (1) 反射光、透過光、散乱光、発光の空間分布測定
   (2) 双方向反射分布関数と、試料が透明な時は双方向透過分布関数の測定
   (3) 反射(透過)光分布から、試料の構造解析
   (4) 反射光、透過光、散乱光、発光の全光量測定
   (5) 再帰反射光の光量と空間分布測定
   (6) 全半球反射率を正反射率、拡散反射率と再帰反射率に分解
   (7) 全半球透過率を正透過率と拡散透過率に分解
   (8) 全半球反射率と全半球透過率から試料の吸収率
   (9) 広いワーキングスペースを持って、明るい高倍率顕微鏡

関連する知財
国内及び海外特許
  詳しい特許リストはこちらです。
この楕円面鏡を使用した散乱計の特許の相関は、以下の図のようです。